「般舟讃 (七祖)」の版間の差分
提供: WikiArc
細 |
細 (→序分) |
||
40行目: | 40行目: | ||
:[[生盲]]にして業に信せて走く、業に随へば[[深坑]]に堕す。 | :[[生盲]]にして業に信せて走く、業に随へば[[深坑]]に堕す。 | ||
:この[[貪瞋]]の火をほしいままにすれば、自損し他人を損じ、 | :この[[貪瞋]]の火をほしいままにすれば、自損し他人を損じ、 | ||
− | :長く無明の海に没して、[[ | + | :長く無明の海に没して、[[木に遇ふ]]こと永く縁なし。 |
行者等かならずすべからく一切[[凡聖]]の境の上において、つねに[[讃順の心]]を起して、[[是非慊恨]]を生ずることなかるべし。 | 行者等かならずすべからく一切[[凡聖]]の境の上において、つねに[[讃順の心]]を起して、[[是非慊恨]]を生ずることなかるべし。 | ||
なんがゆゑぞしかるとならば、みづから[[身口意業]]を防がんがためなり。 | なんがゆゑぞしかるとならば、みづから[[身口意業]]を防がんがためなり。 |
2011年8月29日 (月) 17:35時点における版
現存する善導大師の五部九巻の著作のうち、『観経疏』(「本疏」「解義分」)以外の4部(『法事讃』『観念法門』『往生礼讃』『般舟讃』)はいずれも浄土教の儀礼・実践を明らかにしたものであるので、「具疏」とも「行儀分」とも呼びならわされている。
本書は、その首題に『依観経等明般舟三昧行道往生讃』とあり、尾題には『般舟三昧行道往生讃』とあるが、一般には略して『般舟讃』と称されている。『観経』をはじめとする諸経によって、浄土を願生し阿弥陀仏の徳を讃嘆する別時の行法を説き示したもので、全体は序分、正讃、後述の3段よりなっている。
第1段の序分では、まずこの行法を修める者の心構えを示し、般舟三昧の意義について述べている。第2段の正讃にあたる部分は、七言一句の偈頌の形式による長大な讃文で、浄土の荘厳相と阿弥陀仏の徳、および九品往生の相を讃詠している。第3段の後述の部分では、諸の行者に対して浄土を願うべきことを勧め、一部の結びとしている。
本書は、教学の上からも注目すべき諸多の点を含んでいるが、文学的にも価値が高く、一大詩篇と呼ぶにふさわしい内容のものとなっている。
- 般舟讃
依観経等明般舟三昧行道往生讃 一巻
比丘僧善導撰
序分
【1】 敬ひて一切往生の知識等にまうす。 大きにすべからく慚愧すべし。 釈迦如来は実にこれ慈悲の父母なり。 種々の方便をもつてわれらが無上の信心を発起せしめたまふ。 また種々の方便を説きて教門一にあらざることは、ただわれら倒見の凡夫のためなり。
もしよく教によりて修行すれば、すなはち門々に仏を見て浄土に生ずることを得。 もし人ありて善を行ずるを見聞せば、すなはち善をもつてこれを助けよ。 もし人ありて教を行ずるを見聞せば、これを讃めよ。 もし人ありて行を説くを聞かば、すなはち行によりてこれに順へ。 もし人ありて悟ることあるを聞かば、すなはち悟によりてこれを喜べ。
なんの意ぞしかるとならば、同じく諸仏をもつて師となし、法をもつて母となして生養し、ともに同じく情親しみて外きにあらざればなり。 他の有縁の教行を軽毀し、自の有縁の要法を讃ずることを得ざれ。
すなはちこれみづから諸仏の法眼をあひ破壊するなり。 法眼すでに滅しなば、菩提の正道履足するに由なし。 浄土の門、なんぞよく入ることを得ん。 傷歎していはく、
行者等かならずすべからく一切凡聖の境の上において、つねに讃順の心を起して、是非慊恨を生ずることなかるべし。 なんがゆゑぞしかるとならば、みづから身口意業を防がんがためなり。 おそらくは不善の業起らば、またこれ流転すること前と異なることなからん。 もし自他の境の上に三業を護り得てよく清浄ならしむれば、すなはちこれ仏国に生ずる正因なり。
問ひていはく、すでに三業清浄なる、これ浄土に生ずる正因なりといはば、いかんが作業して清浄と名づくることを得る。 答へていはく、一切の不善の法、自他の身口意にすべて断じて行ぜざる、これを清浄と名づく。 また自他の身口意相応の善にはすなはち上々随喜の心を起す。 もろもろの仏・菩薩の所作の随喜のごとく、われもまたかくのごとく随喜す。 この善根をもつて回して浄土に生ず。 ゆゑに名づけて正因となす。 また浄土に生ぜんと欲せば、かならずすべからくみづから勧め他を勧めて広く浄土の依正二報の荘厳の事を讃ずべし。 またすべからく浄土に入る縁起、娑婆を出づる本末を知るべし。 もろもろの有智のもの、知るべし。
【2】 また問ひていはく、「般舟三昧楽」とは、これなんの義ぞや。
答へていはく、梵語には「般舟」と名づく、ここ(中国)には翻じて「常行道」と名づく。 あるいは七日、九十日、身行じて無間なり、総じては三業無間に名づく。 ゆゑに般舟と名づく。 また「三昧」といふは、またこれ西国(印度)の語、ここには翻じて名づけて「定」となす。 前の三業無間によりて、心至りて感ずるところすなはち仏境現前す。 まさしく境現ずる時すなはち身心内悦す。 ゆゑに名づけて楽となす。 また立定見諸仏と名づく、知るべし。
正 讃
【3】
- 般舟三昧楽[願往生]
- 三界・六道は苦にして停まりがたし[無量楽]
- 曠劫よりこのかたつねに没々たり[願往生]
- 到るところただ生死の声のみを聞く[無量楽]
- 釈迦如来の真の報土は[願往生]
- 清浄荘厳の無勝これなり[無量楽]
- 娑婆を度せんがために化を分ちて入り[願往生]
- 八相成仏して衆生を度したまふ[無量楽]
- あるいは人・天・二乗の法を説き[願往生]
- あるいは菩薩涅槃の因を説き[無量楽]
- あるいは漸あるいは頓空有を明かして[願往生]
- 人法二障ならべて除かしめたまふ[無量楽]
- 根性利なるものはみな益を蒙る[願往生]
- 鈍根無智は開悟しがたし[無量楽]
- 『瓔珞経』のなかには漸教を説く[願往生]
- 万劫の修功不退を証す[無量楽]
- 『観経』・『弥陀経』等の説は[願往生]
- すなはちこれ頓教菩提蔵なり[無量楽]
- 一日七日もつぱら仏を称すれば[願往生]
- 命断えて須臾に安楽に生ず[無量楽]
- 一たび弥陀涅槃国に入りぬれば[願往生]
- すなはち不退を得て無生を証す[無量楽]
- 万劫の修功実に続きがたし[願往生]
- 一時に煩悩百たび千たび間はる[無量楽]
- もし娑婆にして法忍を証することを待たば[願往生]
- 六道にして恒沙の劫にもいまだ期あらず[無量楽]
- 貪瞋はすなはちこれ輪廻の業なり[願往生]
- 煩悩あにこれ無生の因ならんや[無量楽]
- この貪瞋火焼の苦を験むるに[願往生]
- 走きて弥陀国に入るにしかず[無量楽]
【4】
- 弥陀因地にして発心の時[願往生]
- たちまちに王位を捨てて菩提を求めたまふ[無量楽]
- 饒王仏の所にして鬚髪を落し[願往生]
- 出家修道するを法蔵と名づく[無量楽]
- 四十八願これによりて発す[願往生]
- 一々の誓願は衆生のためなり[無量楽]
- 衆宝をもつて荘厳して極楽と名づく[願往生]
- 広大寛平にして限量なし[無量楽]
- われ菩提を得ば心に当ひて坐し[願往生]
- 後際を徹窮して衆生を度せん[無量楽]
- 身相の光明は法界を照らす[願往生]
- 光の及ぶところの処みな益を蒙る[無量楽]
- 一々の光明は相続して照らし[願往生]
- 念仏往生の人を照らし覓む[無量楽]
- 十方諸仏の国に比せんと欲するに[願往生]
- 極楽は身を安んずるに実にこれ精なり[無量楽]
【5】
- 般舟三昧楽[願往生]
- 釈迦如来は悲意深くまします[無量楽]
- 本師釈迦普行を修して[願往生]
- 長時長劫に衆生を度したまふ[無量楽]
- 一切如来方便を設けたまふこと[願往生]
- また今日の釈迦尊に同じ[無量楽]
- 機に随ひて法を説くにみな益を蒙る[願往生]
- おのおの悟解を得て真門に入る[無量楽]
- 門々不同にして八万四なるは[願往生]
- 無明と果と業因とを滅せんがためなり[無量楽]
- 利剣はすなはちこれ弥陀の号なり[願往生]
- 一声称念すれば罪みな除こる[無量楽]
【6】
- 釈迦如来因地の時[願往生]
- たちまちに身財を捨てて妙法を求め[無量楽]
- 小劫・大劫・長時劫[願往生]
- 仏語に随順して誓ひて修行す[無量楽]
- 念々時中に六度を行じ[願往生]
- 慈悲喜捨して衆生を化したまふ[無量楽]
- 三業にもつぱら無間業を修して[願往生]
- 誓ひて菩提無上の尊となりたまふ[無量楽]
- 菩提無上の果を証得して[願往生]
- 身を百億に分ちて衆生を度したまふ[無量楽]
- 一音をもつて演説したまふに機に随ひて悟り[願往生]
- おのおの悟に随ひて真元に到る[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 釈迦如来の教に随順すべし[無量楽]
【7】
- 仏教多門にして八万四なるは[願往生]
- まさしく衆生の機不同なるがためなり[無量楽]
- 身を安んずる常住の処を覓めんと欲せば[願往生]
- 先づ要行を求めて真門に入れ[無量楽]
- 門々不同なるを漸教と名づく[願往生]
- 万劫苦行して無生を証す[無量楽]
- 畢命を期となしてもつぱら念仏すれば[願往生]
- 須臾に命断えて仏迎へ将たまふ[無量楽]
- 一食の時なほ間はることあり[願往生]
- いかんが万劫に貪瞋せざらん[無量楽]
- 貪瞋は人天を受くる路を障へて[願往生]
- 三悪・四趣のうちに身を安く[無量楽]
- 弥陀安養国に到らんと欲せば[願往生]
- 念仏・戒行かならずすべからく回すべし[無量楽]
- 戒行専精なれば諸仏讃めたまひ[願往生]
- 臨終に華座おのづから来迎す[無量楽]
- 一念のあひだに仏会に入りて[願往生]
- 三界・六道永く名を除く[無量楽]
- 三明六通みな自在なり[願往生]
- 畢命すれば不退にして無為を証す[無量楽]
- 四種の威儀につねに仏を見たてまつる[願往生]
- 手に香華を執りてつねに供養したてまつる[無量楽]
- 一念一時衆に随ひて聴き[願往生]
- 百千の三昧自然に成ず[無量楽]
- 一切時中につねに定に入る[願往生]
- 定理聞経みな得悟す[無量楽]
- 百宝の荘厳念に随ひて現じ[願往生]
- 長劫に供養して慈恩を報ず[無量楽]
- 微塵の故業智に随ひて滅し[願往生]
- 不覚転じて真如門に入れば[無量楽]
- 大小僧祇恒沙劫も[願往生]
- また弾指須臾のあひだのごとし[無量楽]
- かくのごとく快楽の処に逍遥す[願往生]
- さらに何事を貪りてか生ずることを求めざらん[無量楽]
- たとひ千年五欲を受くとも[願往生]
- 地獄の苦の因縁を増長せん[無量楽]
- 貪瞋十悪相続して起る[願往生]
- あにこれ解脱涅槃の因ならんや[無量楽]
- 三塗を畏れずして衆罪を造り[願往生]
- 三宝を破滅して永く沈淪す[無量楽]
- 父母に孝せず眷属を罵りて[願往生]
- 地獄に身を安き出づる期なし[無量楽]
- 曠劫よりこのかた苦海に沈みて[願往生]
- 西方の要法いまだかつて聞かず[無量楽]
- 人身を得たりといへども多く障あり[願往生]
- 仏化を受けずしてかへりて疑を生ず[無量楽]
- 六方如来の慈悲極まり[願往生]
- 同心に同じく勧めて西方に往かしめたまふ[無量楽]
- 長病遠行には日を計へず[願往生]
- 念仏にはすなはち功夫なしといふ[無量楽]
- かくのごとき人は化度しがたし[願往生]
- 無明に底められてかつ長く眠る[無量楽]
【8】
- もつぱら『弥陀』・『観経』の法を読むべし[願往生]
- 文々句々に西方を説く[無量楽]
- 地下の宝幢無億数なり[願往生]
- 方楞具足してことごとく光を輝かす[無量楽]
- 万億の宝珠あひ映飾して[願往生]
- おのおの希奇の事を変現す[無量楽]
- 上衆宝荘厳の地を照らして[願往生]
- 雑色百千の日よりも過ぎたり[無量楽]
- 自身の光明は紫金色なり[願往生]
- 足宝地を践みて徐々として行く[無量楽]
- この無生宝国の地を得るは[願往生]
- みなこれ弥陀願力の恩なり[無量楽]
- 一切時中に妙法を聞く[願往生]
- 煩悩・罪障起るに由なし[無量楽]
- 菩薩は知識同学となり[願往生]
- 手を携へあひ将て宝堂に入らしむ[無量楽]
- 念々のうちに法楽を受け[願往生]
- 須臾に百千の門を悟得す[無量楽]
- 大衆同心にこの界を厭へ[願往生]
- 仏の願力に乗ずれば弥陀を見たてまつる[無量楽]
- たちまちに思量すれば心髄痛む[願往生]
- 無窮の劫にもいたづらに疲労せり[無量楽]
- みづから今身に浄土を聞くことを慶ぶ[願往生]
- 身命を惜しまずして西方に往かん[無量楽]
- 西方は快楽無為の処なり[願往生]
- 天上・人間に比量なし[無量楽]
- 六天あひ勝るること億万倍なるも[願往生]
- 西方の人の一相にも及ばず[無量楽]
- 三十二相ありて通自在なり[願往生]
- 身光あまねく十方界を照らす[無量楽]
- 世の帝王より六天に至るまで[願往生]
- 音楽あひ勝るること億万重なり[無量楽]
- 仏国の宝林枝あひ触るるに[願往生]
- 六天の音楽は一にもしかず[無量楽]
- 時によりて供養の香風起り[願往生]
- 樹を払へば華飛びて宝池に落つ[無量楽]
- 宝樹の飛華徳水に汎ぶ[願往生]
- 童子捉取しをはりて船となす[無量楽]
- 船に乗りてただちに蓮華会に入る[願往生]
- 化仏・菩薩衣を与へて被しめたまふ[無量楽]
- おのおの香華を執りて仏前に立し[願往生]
- 徐々としてはるかに散ずれば変じて雲となる[無量楽]
- 宝雲の荘厳はすなはちこれ蓋なり[願往生]
- すなはち宝果を与へて教へて食せしむ[無量楽]
- 往生の善知識に遇値ひて[願往生]
- 浄土・弥陀の名を聞くことを得たり[無量楽]
- 仏の願力によりて来りてあひ見ゆ[願往生]
- つねにこの国に住して還るを須ゐず[無量楽]
- 法侶携へ将て林に入りて看れば[願往生]
- 足下の輝光日月に超えたり[無量楽]
- 菩薩の衆会窮尽することなし[願往生]
- おのおのの身光たがひにあひ照らす[無量楽]
- 新往の化生も紫金色なり[願往生]
- もろもろの大衆と殊異なし[無量楽]
- あるいは宝楼に入りて衆中に坐す[願往生]
- 大衆見るものみな歓喜す[無量楽]
- 種々の荘厳識るべからず[願往生]
- 内外あひ看るに障礙なし[無量楽]
- 足を佇むれば須臾に法楽を受く[願往生]
- 三昧無生自然に悟る[無量楽]
【9】
- 地上の荘厳衆宝間はる[願往生]
- 雑色あひ参はりて百千万なり[無量楽]
- 宝座・華台処々に満てり[願往生]
- 心に随ひて受用するに光来りて照らす[無量楽]
- 百千の童子・菩薩衆[願往生]
- おのおの香華を捧げて池に臨みて看る[無量楽]
- あるいは坐しあるいは立して池渠の岸にあり[願往生]
- あるいは階を尋ねて宝池に入るものあり[無量楽]
- あるいは沙に立ちあるいは膝に至り[願往生]
- あるいは腰頭を没しあるいは懸け注ぐ[無量楽]
- あるいは金華・百宝の葉を取りて[願往生]
- 岸上にして池を看る人に授与す[無量楽]
- 香華を受得すること千万種なり[願往生]
- すなはち弥陀大会の上に散ず[無量楽]
- 所散の華変じて蓋となる[願往生]
- 自然の音楽繞ること千重なり[無量楽]
- 宝鳥声を連ねて天の楽を奏す[願往生]
- 一切の見るもの悲心を起す[無量楽]
- われいまここに到ることは仏の願力なり[願往生]
- 同縁同行いづれの時にか来る[無量楽]
- あまねく願はくは閻浮の知識等[願往生]
- 同行あひ親しみて願ひて退することなかれ[無量楽]
- もつぱら『弥陀』・『観経』等を誦し[願往生]
- 仏を礼し観察してことごとくすべからく回すべし[無量楽]
- 一切時中に相続してなし[願往生]
- 死に至るを期となしてもつぱらにしてまたもつぱらなれ[無量楽]
- 一たび弥陀安養国に到りぬれば[願往生]
- 畢竟逍遥してすなはち涅槃なり[無量楽]
- 涅槃の荘厳処々に満ち[願往生]
- 色を見香を聞ぐに罪障除こる[無量楽]
- 空中に飛踊して神変をなし[願往生]
- 浄土の難思議なることを讃歎す[無量楽]
- あるいは華香を散じて仏を供養し[願往生]
- 仏(阿弥陀仏)の慈恩を報ずるに心無尽なり[無量楽]
- 釈迦如来の力によらずは[願往生]
- 弥陀の浄土いかんが聞かん[無量楽]
- 衆生の障尽きぬれば聞きてみな喜ぶ[願往生]
- たちまちに諸悪を断じて願じて生ずることを求めよ[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 誓願して今生に仏教に順じ[無量楽]
- 行住坐臥にもつぱら念仏し[願往生]
- 一切の善業併せてすべからく回すべし[無量楽]
- 念々時中につねに懺悔すれば[願往生]
- 終時にすなはち金剛台に上る[無量楽]
- 一切時中に西を望みて礼し[願往生]
- 凡聖の心あひ向かふことを表知せよ[無量楽]
- 仏は衆生の心の雑乱を知ろしめして[願往生]
- ひとへに正念にして西方に住せよと教へたまふ[無量楽]
- 弥陀国の遠近を知らざれば[願往生]
- 仏のたまはく「十万億を超過せり」と[無量楽]
- 道里はるかなりといへども足をもつて到らざれば[願往生]
- 弾指のあひだに宝池に入る[無量楽]
- ただ衆生の疑ふべからざるを疑ふを恨む[願往生]
- 浄土対面してあひ忤はず[無量楽]
- 弥陀の摂と不摂とを論ずることなかれ[願往生]
- 意専心にして回すると回せざるとにあり[無量楽]
- ただ回心し決定して向かへば[願往生]
- 臨終に華蓋おのづから来迎す[無量楽]
- 仏に従ひ華に乗じて宝国に入り[願往生]
- もろもろの大衆を見て無生を悟る[無量楽]
- 一々の宝楼意に随ひて入る[願往生]
- 内外の荘厳識るべからず[無量楽]
- 鳥音声をなせば菩薩舞ふ[願往生]
- 童子歓喜して神通をなす[無量楽]
- わが娑婆より得生せるもののために[願往生]
- 種々に供養して歓喜せしむ[無量楽]
- 仏生ぜし人をして将て〔浄土を〕観看しめたまふに[願往生]
- 到るところただこれ不思議なり[無量楽]
【10】
- 地上・虚空に聖人満ち[願往生]
- 珠羅宝網自然に覆ふ[無量楽]
- 微風吹き動かして妙響を出し[願往生]
- 声中にみな無為の法を説く[無量楽]
- 樹を見波を聞きて法忍を成ず[願往生]
- 童子華を持して囲繞して讃ず[無量楽]
- 弥陀に立侍して説法を聴き[願往生]
- 法楽を貪愛して時劫を超ゆ[無量楽]
- 本国の諸菩薩に随逐するに[願往生]
- ことごとくこれ無為涅槃界なり[無量楽]
- 一仏の国界にしてみな法を聞き[願往生]
- 他方に遊歴して供養を修す[無量楽]
- 住せんと欲すれば一食をもつて千劫を超ゆ[願往生]
- わが娑婆の同行人を憶す[無量楽]
- 大地微塵はなほ数あり[願往生]
- 十方の仏国は窮尽することなし[無量楽]
- 一々の仏土みな厳浄なり[願往生]
- また極楽のごとくにして殊異なし[無量楽]
- 一切の如来見て歓喜したまひ[願往生]
- 菩薩聖衆将て遊観せしめたまふ[無量楽]
- あらゆる荘厳極楽のごとし[願往生]
- 変化神通障礙することなし[無量楽]
- 地上・虚空に声遍満す[願往生]
- 響きを聴き音を聞きみな得悟す[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 相続念仏して師恩を報ぜよ[無量楽]
- 銭財を捨てて功徳を造るといへども[願往生]
- 戒を持ちて貪瞋を断ずるにはしかず[無量楽]
- あまねく衆生を敬ひてつねに念仏して[願往生]
- 自他の功徳併せてすべからく回すべし[無量楽]
- 安心定意にして安楽に生ずれば[願往生]
- 独り三界を超えて煩籠を出づ[無量楽]
- 臨終に仏華台の至るを見[願往生]
- 須臾にすなはち宝池会に入る[無量楽]
- 蓮華の大衆みな歓喜す[願往生]
- すなはち天衣を与へて意に随ひて着しむ[無量楽]
- 菩薩・声聞将て仏に見えしむ[願往生]
- 仏を礼すること一拝して無生を得[無量楽]
- 弥陀もろもろの仏子に告げてのたまはく[願往生]
- 「極楽はかの三界にいかん」と[無量楽]
- 新往の化生ともに報へんと欲するに[願往生]
- 合掌悲咽していふことあたはず[無量楽]
- 娑婆長劫の苦を免るることを得て[願往生]
- 今日仏(阿弥陀仏)を見たてまつること釈迦の恩なり[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 仏語に順随すれば弥陀を見たてまつる[無量楽]
- あまねく同生の知識等に勧む[願往生]
- 同行あひ親しみてあひ離るることなかれ[無量楽]
- [[父母妻児百千万なれども[願往生]
- これ菩提の増上縁にあらず]][無量楽]
- 念々にあひ纏ひて悪道に入る[願往生]
- 身を分ちて報を受くればあひ知らず[無量楽]
- あるいは猪・羊六畜のうちにあり[願往生]
- 毛を被り角を戴くこといづれの時にか了まん[無量楽]
- 慶ばしきかな人身を得て要法を聞き[願往生]
- たちまちに他郷を捨てて本国に帰ること[無量楽]
- 父子あひ見ゆることつねの喜びにあらず[願往生]
- 菩薩・声聞もまたしかなり[無量楽]
- あるいは将て遊行して林に入りて看しめ[願往生]
- あるいは華台に坐し楼観に登る[無量楽]
- 弥陀の七宝国を観見するに[願往生]
- 地上・虚空に光あひ照らす[無量楽]
- すなはち神通をなして仏国に遍し[願往生]
- 処々に無辺の会を供養す[無量楽]
- 一々の大会人に随ひて入る[願往生]
- 入る処ただ平等の法を聞く[無量楽]
- 四種の威儀につねに定にあり[願往生]
- 三昧を出でずして神通をなす[無量楽]
- 一々の神通仏会に到り[願往生]
- 会々に法を聴きて無生を証す[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 極楽は身を安んずるに実にこれ精なり[無量楽]
- 金楼・玉柱・瑠璃の殿[願往生]
- 真珠の宝閣百千行なり[無量楽]
- 重々の羅網あひ映飾し[願往生]
- 宝縄交絡して鈴珮を垂る[無量楽]
- 昼夜に香風ありて時々に動かすに[願往生]
- 声のうちにみな三宝の名を称す[無量楽]
- かの国の衆生心眼利なり[願往生]
- 一を聞きて百千の門を悟解す[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 処々に身を安んずるにかしこにしかず[無量楽]
- もろもろの童子とともに空に遊びて戯る[願往生]
- 手に香華を散じて心に供養す[無量楽]
- 身光と瓔珞とたがひにあひ照らす[願往生]
- 一切荘厳の光もまたしかなり[無量楽]
- あるいは楽器を奏して仏を供養したてまつるに[願往生]
- 化仏慈悲をもつてはるかに授記したまふ[無量楽]
- 同生の知識百千万なり[願往生]
- 華に乗じてただちに虚空会に入る[無量楽]
- 会々不同にして無億数なり[願往生]
- 彼此あひ過ぐるに障礙なし[無量楽]
- 一切時中につねに法を説く[願往生]
- 見聞歓喜して罪みな除こる[無量楽]
- 仏(阿弥陀仏)と聖衆と身金色なり[願往生]
- 光々あひ照らし心あひ知る[無量楽]
- 相好荘厳殊異なし[願往生]
- みなこれ弥陀の願力をもつて成ず[無量楽]
- 地上・虚空に人遍満す[願往生]
- 神通転変自然に知る[無量楽]
- あるいは華楼・宝雲蓋をなし[願往生]
- 化鳥声を連ねて法音を奏す[無量楽]
- 法音旋転して雲のごとくに合す[願往生]
- かの国の人天聞きてすなはち悟る[無量楽]
- 一劫・多劫・長時劫に[願往生]
- ただ法楽のみを受けて不思議なり[無量楽]
【11】
- 般舟三昧楽[願往生]
- 極楽の荘厳の門ことごとく開けたり[無量楽]
- あまねく願はくは有縁の同行者[願往生]
- 専心に直入して疑ふべからず[無量楽]
- 一たび弥陀の安養国に到りぬれば[願往生]
- もとよりこれわが法王の家なり[無量楽]
- 兄弟の因縁は羅漢衆なり[願往生]
- 菩薩法侶は知識となる[無量楽]
- あるいは行じあるいは坐してみな法を聞き[願往生]
- あるいは去りあるいは来るに障礙なし[無量楽]
- あるいは宝池に入りて身頂を灌ひ[願往生]
- あるいは乾地宝沙のなかにあり[無量楽]
- 水を弄てば微波妙響を出し[願往生]
- 声のうちにもつぱら慈悲の法を説く[無量楽]
- 徳水清澄にして千万里なり[願往生]
- 宝沙映徹して深からざるがごとし[無量楽]
- 四岸の荘厳七宝間はる[願往生]
- 〔宝池の〕底に布ける金沙に百千の色あり[無量楽]
- 色々不同にして光を輝かして照らす[願往生]
- 宝樹の飛華水中に落つ[無量楽]
【12】
- 樹々条を垂れて宝帳のごとし[願往生]
- 周匝すること由旬三十万なり[無量楽]
- 根・茎・枝・葉七宝間はる[願往生]
- 一々の宝無数の光を流す[無量楽]
- 微風起る時たがひにあひ触るるに[願往生]
- 六天の音楽もよく比ぶるものなし[無量楽]
- 化仏・菩薩・恒沙の衆[願往生]
- 一々の樹下にして真声を聴く[無量楽]
【13】
- 般舟三昧楽[願往生]
- 一たび〔浄土に〕入りぬれば不退にして菩提に至る[無量楽]
- 宝地寛平にして衆宝間はる[願往生]
- 一々の宝百千の光を出す[無量楽]
- 一々の光宝台座となり[願往生]
- 光変じて楼となること百千億なり[無量楽]
- 化天童子数を窮むることなし[願往生]
- ことごとくこれ念仏往生の人なり[無量楽]
- あるいは宝座に登り楼中に戯れ[願往生]
- 飢ゑず渇かず湛然として常なり[無量楽]
- あるいは光明百宝の殿に入り[願往生]
- まさしく大会に値ひて弥陀を讃じたてまつる[無量楽]
- あるいはいはく「今より仏果に至るまで[願往生]
- 長劫に仏を讃じて慈恩を報ぜん」と[無量楽]
- 弥陀の弘誓の力を蒙らずは[願往生]
- いづれの時いづれの劫にか娑婆を出でん[無量楽]
- 〔浄土に〕到りてよりこのかたつねに法楽あり[願往生]
- 畢竟じて十悪の声を聞かず[無量楽]
- 眼には如来を見たてまつり耳には法を聞き[願往生]
- 身はつねに仏に従ひて喜びまた悲しむ[無量楽]
- なんぞ今日宝国に至るを期する[願往生]
- 実にこれ娑婆本師(釈尊)の力なり[無量楽]
- もし本師知識の勧めにあらずは[願往生]
- 弥陀の浄土いかんが入らん[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 浄土に生ずることを得て師恩を報ぜよ[無量楽]
- あまねく有縁の道俗等に勧む[願往生]
- かならずこれ専心にして仏教を行ぜよ[無量楽]
- 念仏し専心に誦経し観じ[願往生]
- 荘厳を礼讃して雑乱することなかれ[無量楽]
- 行住坐臥に心相続すれば[願往生]
- 極楽の荘厳自然に見る[無量楽]
- あるいは想しあるいは観ずるに罪障を除く[願往生]
- みなこれ弥陀の本願力なり[無量楽]
- 仏力をもつてのゆゑに三昧を成ず[願往生]
- 三昧成ずることを得て心眼開けぬれば[無量楽]
- 諸仏の境界にして凡外に超えたり[願往生]
- ただ知りて釈迦の恩を慚賀すべし[無量楽]
- 十方の如来舌を舒べて証して[願往生]
- 九品還帰することを得と定判したまふ[無量楽]
- 父子あひ迎へて大会に入らしめて[願往生]
- すなはち六道苦辛の事を問ふ[無量楽]
- 「あるいは所得の人天の報あれども[願往生]
- 飢餓困苦して体に瘡を生ず」と[無量楽]
- その時に弥陀および大衆[願往生]
- 子の苦を説くことを聞きてみな傷歎したまふ[無量楽]
- 弥陀もろもろの仏子に告げてのたまはく[願往生]
- 「自作自受なり他を怨むことなかれ」と[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 常住の宝国には永く憂ひなし[無量楽]
- 涅槃快楽無為の処には[願往生]
- 貪瞋の火宅いまだかつて聞かず[無量楽]
- 百宝の華台に意に随ひて坐す[願往生]
- 坐する処には聖衆無央数なり[無量楽]
- 童子供養し声聞讃ず[願往生]
- 鳥楽空に飛びて百千匝なり[無量楽]
- 一坐一立須臾のあひだに[願往生]
- 微塵の故業ことごとく消除す[無量楽]
- あるいは天衣を散じて宝池に覆ひ[願往生]
- 衣の上にさらに宝華香を散ず[無量楽]
- 聖衆行く時足上を踏む[願往生]
- 衣・華体に触るるに三禅の楽あり[無量楽]
- 内外映徹して明鏡のごとし[願往生]
- 塵労畢竟じて縁起することなし[無量楽]
- 念々ただ三昧の浄きを加す[願往生]
- 無漏の神通真にしてまた真なり[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 煩悩永く絶えてあひ干さず[無量楽]
- あるいは宝地の瑠璃をもつて間へたるあり[願往生]
- あるいは宝地の紫金をもつてなせるあり[無量楽]
- あるいは宝地の黄金をもつてなせるあり[願往生]
- あるいは宝地の頗梨をもつて映ぜるあり[無量楽]
- あるいは千宝をもつて荘厳せる地あり[願往生]
- あるいは算数の宝をもつてなせるあり[無量楽]
- 一々の色々光あひ照らす[願往生]
- 十方より来れるものみな上を行く[無量楽]
- 行住進止逍遥の楽[願往生]
- 官事を愁へず私を憂へず[無量楽]
- あるいは百たびあるいは千たび神変をなし[願往生]
- 会々に供養してみな周遍す[無量楽]
- あるいは香雲千宝の蓋をなし[願往生]
- すなはちこの雲のうちより香華を雨らし[無量楽]
- 種々の荘厳念に随ひて出づ[願往生]
- 到るところの処には希奇を現ず[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 畢命してただちに無為の会に入れ[無量楽]
- 宝樹・宝林行びて遍満し[願往生]
- 一々の林樹ことごとく荘厳せり[無量楽]
- 根々相対し茎相望し[願往生]
- 枝々相准し条相順し[無量楽]
- 節々相盤し葉相次し[願往生]
- 華々相向し果相当す[無量楽]
- 光々自他の国を照耀し[願往生]
- 照らす処朎朧として物の色に随ふ[無量楽]
- 光よく希奇の事を変現す[願往生]
- ことごとくこれ弥陀願力のなせるなり[無量楽]
- 林樹の行間に宝の階道あり[願往生]
- 一々の界上に楼あひ間はる[無量楽]
- 重々の羅網天楽を奏して[願往生]
- 無辺の楼内の人を供養す[無量楽]
【14】
- 般舟三昧楽[願往生]
- 形枯命断に仏前を期せよ[無量楽]
- たちまちにかの快楽を思量するに[願往生]
- 人々分あり疑ふべからず[無量楽]
- 金剛無漏荘厳の地[願往生]
- 明々としてあひ照らすこと千日に超えたり[無量楽]
- 弥陀の願力荘厳の地[願往生]
- 一の蓮華大宝王をなせり[無量楽]
- 葉々あひ重なりて八万四なり[願往生]
- 一葉に摩尼百千億なり[無量楽]
- 一々の摩尼光千色なり[願往生]
- 上虚空を照らし変じて蓋となる[無量楽]
- 八万の金剛をもつて台の上に布けり[願往生]
- 真珠の宝網華を覆ひて籠る[無量楽]
- 四幢縵を承けて絞絡を垂る[願往生]
- 独り真金功徳の身を顕したまふ[無量楽]
- 一たび華台に坐していまだかつて動かず[願往生]
- 後際を徹窮して衆生を度したまふ[無量楽]
- あまねく衆生に勧むつねに憶念して[願往生]
- 行住坐臥に心をして見しめよ[無量楽]
- 仏身円満にして背相なし[願往生]
- 十方より来れる人みな面に対ふ[無量楽]
- ともに願じて心を傾けて相続して念ぜよ[願往生]
- すなはち有縁の心眼の前に現ぜん[無量楽]
- 浄土の希奇の事を見ることを得るは[願往生]
- みなこれ仏力はるかに加備したまへばなり[無量楽]
- 観音・勢至華をならべて坐したまふ[願往生]
- 一々の荘厳また仏(阿弥陀仏)のごとし[無量楽]
- 四幢・宝幔みなあひ似たり[願往生]
- 宝羅・宝網殊異なし[無量楽]
- 三華独りはるかに衆座に超えたり[願往生]
- 三身対坐してもつとも尊たり[無量楽]
- 本国・他方の菩薩衆[願往生]
- 一切時中に囲繞して讃ず[無量楽]
- かくのごとき大海塵沙会[願往生]
- 衆生生ずるものそのなかに入る[無量楽]
- これ口言をもつてすなはちかしこに生ずるにあらず[願往生]
- かならずこれもつぱら行じて身を惜しまざればなり[無量楽]
【15】
- 宝楼重畳人の造れるにあらず[願往生]
- 宝幢・樹林またみなしかなり[無量楽]
- 池渠の四岸にみな充遍す[願往生]
- 微風しばらく触るるに天楽を奏す[無量楽]
- 法響心に灌ぎて毛孔より入れば[願往生]
- すなはち恒沙の三昧門を悟る[無量楽]
- 一切の渠中に華遍満す[願往生]
- あるいは開しあるいは合して人無数なり[無量楽]
- あるいは坐しあるいは立してあひ招喚し[願往生]
- 競ひて香華を取りてあひ供養す[無量楽]
- あるいは語りあるいは笑ひて身心楽しむ[願往生]
- すなはち閻浮の同行人を憶す[無量楽]
- おのおの誓願を発してはるかに加備し[願往生]
- 専住して退くことなかれことごとくすべからく来るべしと[無量楽]
- 一たび〔浄土に〕到りぬればすなはち清虚の楽を受く[願往生]
- 清虚はすなはちこれ涅槃の因なり[無量楽]
- わが心を表知してあひ憶念し[願往生]
- おのおの半座を留めて来る人に与ふ[無量楽]
- 同学あひ随ひて法界に遊ぶ[願往生]
- 法界はすなはちこれ如来の国なり[無量楽]
- 一々の仏国に恒沙の会あり[願往生]
- 身を分ちて法を聴き供養を修す[無量楽]
- 諸仏の慈光照らすことを蒙ることを得[願往生]
- 摩頂授記せられて無余に入る[無量楽]
- 意に他方に住せんと楽へばすなはち住し[願往生]
- すべからく帰還せんと欲すればすなはち帰還すべし[無量楽]
- もしは住もしは還みな益を得[願往生]
- 本国・他方また無二なり[無量楽]
- ことごとくこれ涅槃平等の法なり[願往生]
- 諸仏の智慧もまた同然なり[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 到る処ことごとくこれ法王の家なり[無量楽]
- 歴事しをはりて記せられて安楽に還り[願往生]
- 無量の陀羅尼を証得す[無量楽]
- もろもろの菩薩塵沙の衆と[願往生]
- 虚空に遍満して来りて供養す[無量楽]
- あるいは衣・華を散ずるに変じて蓋となり[願往生]
- あるいは音楽を奏するに変じて雲となる[無量楽]
- 変現の幢幡無億数なり[願往生]
- 一食のあひだに安楽に到る[無量楽]
- 安楽の衆聖はるかにあひ見て[願往生]
- これ他方の同行人なりと知り[無量楽]
- おのおの起ちて華を持して迎へて供養し[願往生]
- すなはち引きてただちに弥陀会に入る[無量楽]
- 他方の菩薩同じく仏を礼して[願往生]
- 華を持して囲繞すること百千匝なり[無量楽]
- あるいは香華を散じて天楽を奏し[願往生]
- また神変を現じて虚空に満つ[無量楽]
- 光々あひ照らして仏を供養し[願往生]
- 異口同音に極楽を讃ず[無量楽]
- 弥陀時に応じて身相を動かしたまふに[願往生]
- 身光あまねく十方の国を照らす[無量楽]
- 放つところの神光色無尽なり[願往生]
- 回光還りて弥陀会を照らす[無量楽]
- 照らしをはりて光頂上より入れば[願往生]
- 大衆同じく授記の光なりと知る[無量楽]
- 光を収むることいまだ尽きざるに弥陀笑みたまひて[願往生]
- あまねく大衆に告げて専心に聴かしめたまふ[無量楽]
- 「われいまなんぢに菩提の記を授く[願往生]
- 久しからずしてまさにことごとく来りて成仏すべし」と[無量楽]
- 本住・他方の化生の衆[願往生]
- 遭ひがたき希有の比を得ることを慶ぶ[無量楽]
【16】
- 娑婆長劫の難を免るることを得ることは[願往生]
- ことに知識釈迦の恩を蒙れり[無量楽]
- 種々に思量し巧みに方便して[願往生]
- 選びて弥陀弘誓の門を得しめたまへり[無量楽]
- 一切の善業は回して生ずる利あれども[願往生]
- もつぱら弥陀の号を念ずるにしかず[無量楽]
- 念々に称名してつねに懺悔す[願往生]
- 人よく仏を念ずれば仏また憶したまふ[無量楽]
- 凡聖あひ知り境あひ照らす[願往生]
- すなはちこれ衆生増上縁なり[無量楽]
- 他人の語を信受することを得ざれ[願往生]
- 「ただ心をして浄ならしむればこれみな浄なり」といふことを[無量楽]
- もしこれ同じく諸仏の国なりといはば[願往生]
- なにによりてか六道同じく生死せん[無量楽]
【17】
- 棘刺叢林三界に満ち[願往生]
- 山河大地同じく高下あり[無量楽]
- 水・陸・虚空の衆生の性は[願往生]
- 無明煩悩等しく貪瞋なり[無量楽]
- 念々に財色を貪求して苦しみ[願往生]
- 業愛痴の縄人を縛りて送る[無量楽]
- 閻羅使ひを遣はして牽き将て去る[願往生]
- 獄率牛頭催してまた催す[無量楽]
- 盛りなる火四面に同時に起り[願往生]
- 業風の吹くに随ひて苦のなかに落つ[無量楽]
- 最火の泥犂四門の外[願往生]
- 門々に八万四千の隔あり[無量楽]
- 一々の隔のなかに人々到る[願往生]
- 恒沙の苦具そのなかにあり[無量楽]
- 罪人の身上に煙炎起り[願往生]
- 飛輪・刀剣縦横に入る[無量楽]
- 一切の獄中同じくこの苦あり[願往生]
- いづれの時いづれの劫にか休む時を得ん[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 三塗永く絶えて願はくは名すらなからん[無量楽]
- 七重の鉄城に七重の網あり[願往生]
- 重々の城内に鉄の林樹あり[無量楽]
- 樹々の枝条八万四なり[願往生]
- 葉々華果刀輪のごとし[無量楽]
- 飛輪上に踊りて還りて下に来る[願往生]
- 頭に入りて足に出づ痛み忍びがたし[無量楽]
- 重々の門の上に八万の釜あり[願往生]
- 鎔銅鉄汁湧くこと泉のごとし[無量楽]
- 沸き涌きて波を騰ぐること高さ八万[願往生]
- ただちに門外千由旬を射る[無量楽]
- 四門の四道より罪人入る[願往生]
- 門開けて業火出でて来迎す[無量楽]
- 鉄汁焱々として流れて膝を没す[願往生]
- 触るる処煙炎同時に起る[無量楽]
- 牛頭獄率道の辺にして[[テンプレート:Font]]れば[願往生]
- 大地震動すること天雷のごとし[無量楽]
- 罪人これを聞きて心肚裂くれば[願往生]
- 鉄虫・鉄鳥争ひ来りて食す[無量楽]
- 鉄丸・刀剣空中より下り[願往生]
- 鎔銅鉄汁身の上に注ぐ[無量楽]
- 鉄城の門を去ること四万里なり[願往生]
- かならず中を取りて行かしむるに避る処なし[無量楽]
- 行くこと疾くして風に過ぎ箭の射るがごとし[願往生]
- 須臾にすなはち七重の門に入る[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 専心に念仏して貪瞋を断ずべし[無量楽]
- この七重の鉄門のうちに入りなば[願往生]
- いづれの時いづれの劫にか回還ることを得ん[無量楽]
- 罪人入りをはりぬれば門みな閉づ[願往生]
- 一々の身満ちてあひ妨げず[無量楽]
- 一たび臥するに八万長時劫なり[願往生]
- みな破法罪の因縁による[無量楽]
- 三宝を謗毀し人の善を壊れば[願往生]
- また阿鼻大獄のなかに堕つ[無量楽]
- 戯笑の作罪も多劫に受く[願往生]
- 仏意を惜しまずして人情を取らんや[無量楽]
- つつしみて軽心をもつて三業をほしいままにすることなかれ[願往生]
- 業道分明なり欺くべからず[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 横に業道を截り西方に入れ[無量楽]
- 七重の鉄城の門々の外に[願往生]
- 鉄蟒頭を挙げて城の上より出づ[無量楽]
- 火炎・刀輪口より出で[願往生]
- またみな流れて罪人の上に注ぐ[無量楽]
- 四角の鉄狗の身の毛孔より[願往生]
- また煙火を人身の上に雨らす[無量楽]
- 羅刹叉を擎げて心眼を刺す[願往生]
- みな心眼をもつて泥犂に堕するによる[無量楽]
- 熱鉄の地上に無窮の苦あり[願往生]
- 罪人あるいは臥しあるいは行き走る[無量楽]
- 大劫尽くる時眼中に見ゆ[願往生]
- 東門の城外に清林泉ありと[無量楽]
- 罪人一時に東に向かひて走る[願往生]
- 臨々として門に到らんと欲すれば還りて閉づ[無量楽]
- かくのごとく四門にはるかなること半劫なり[願往生]
- 鉄網身を鉤すること棘林のごとし[無量楽]
- 上に鷹鳥ありて人の肉を啄む[願往生]
- 地に銅狗ありて争ひ来りて食す[無量楽]
- 地上・虚空に避る処なし[願往生]
- 動けばすなはち苦具うたたいよいよ多し[無量楽]
【18】
- 般舟三昧楽[願往生]
- この苦を説くを聞けば心摧砕す[無量楽]
- 父母に孝せず三宝を罵れば[願往生]
- 終時に獄火おのづからあひ迎ふ[無量楽]
- 六親を毀辱し浄戒を破すれば[願往生]
- またかくのごとき泥犂のなかに堕す[無量楽]
- 衆生を殺害し他肉を食すれば[願往生]
- ただちに泥犂火聚のなかに入る[無量楽]
- 見聞・方便・処分の殺[願往生]
- 前のごとく苦を受くいまだ何央ならず[無量楽]
- 三宝・衆生の物を劫盗すれば[願往生]
- 一たび泥犂に堕して出づる期なし[無量楽]
- 父母・六親の物を偸劫するも[願往生]
- またかくのごとき泥犂のなかに入る[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 身財を惜しまずしてつねに恵施すべし[無量楽]
- 師僧を悪染し浄行を壊すれば[願往生]
- 泥犂永劫にして出づるに期なし[無量楽]
- 衆生および眷属を邪染すれば[願往生]
- さだめて泥犂長劫の苦に入る[無量楽]
- もし人身を得れば黄門の報あり[願往生]
- 六親同住するも怨家のごとし[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 願はくは邪心を断じて梵行を修せよ[無量楽]
- 三宝・衆生の類を欺誑すれば[願往生]
- 死して泥犂に入りて出づる期なし[無量楽]
- 悪口・両舌・貪・瞋・慢なれば[願往生]
- 八万の地獄にみな周遍す[無量楽]
- 他人と三宝との過を論説すれば[願往生]
- 死して抜舌泥犂のなかに入る[無量楽]
【19】
- あまねく衆生に勧む三業を護り[願往生]
- 行住坐臥に弥陀を念じ[無量楽]
- 一切時中に地獄を憶して[願往生]
- 増上の往生心を発起せよ[無量楽]
- 誓願して三塗の業を作らざれ[願往生]
- 人天の楽報もまた心にかくることなかれ[無量楽]
- たちまちに地獄長時の苦を憶して[願往生]
- 捨てて須臾も安楽を忘れざれ[無量楽]
- 安楽仏国は無為の地なり[願往生]
- 畢竟じて身を安んずるに実にこれ精なり[無量楽]
【20】
- 般舟三昧楽[願往生]
- ただ仏の一道のみ独り清閑なり[無量楽]
- 浄土の荘厳尽くることあることなし[願往生]
- 十方より生ずるものまた窮まりなし[無量楽]
- 千劫・万劫・恒沙劫にも[願往生]
- 一切の去くものあひ妨げず[無量楽]
- 十方の衆生もいまだかつて減ぜず[願往生]
- 弥陀仏国もまた増することなし[無量楽]
- 弥陀の願力心に随ひて大なれば[願往生]
- 四種の荘厳あまねくみな遍し[無量楽]
- 三明六通つねに自在にして[願往生]
- あまねく衆生の心想のうちに入る[無量楽]
- 仏身の相好心によりて起り[願往生]
- 念に随ひてすなはち真金の仏を現ず[無量楽]
- 真金はすなはちこれ弥陀の相なり[願往生]
- 円光の化仏人の前に現ず[無量楽]
- 相好いよいよ多くして八万四なり[願往生]
- 一々の光明十方を照らす[無量楽]
- 余縁のために光あまねく照らさず[願往生]
- ただ念仏往生の人を覓む[無量楽]
- 万行ともに回してみな往くことを得れども[願往生]
- 念仏の一行もつとも尊たり[無量楽]
- 回生の雑善おそらくは力弱し[願往生]
- 一日七日の念に過ぐるものなし[無量楽]
- 命終らんと欲する時聖衆現じて[願往生]
- すなはち華台に坐して宝国に至る[無量楽]
- 清浄大海無生の衆[願往生]
- はるかに生ずるものを見てみな歓喜す[無量楽]
【21】
- 観音の相好仏(阿弥陀仏)と異なることなし[願往生]
- 慈悲をもつて苦を救ふにもつとも強しとなす[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 師教に違せずして弥陀を念ぜしむ[無量楽]
- 苦を救ふことはるかに世界を別つといへども[願往生]
- 衆生急に念ずれば時に応じて来りたまふ[無量楽]
- あるいは声聞・菩薩の相を現じて[願往生]
- 縁に随ひて楽見し衆生を度したまふ[無量楽]
- 悲心苦を抜きて三界を超えしめ[願往生]
- 慈心楽を与へて涅槃を期せしむ[無量楽]
- 衆生に随逐して身に異なることあり[願往生]
- 身を六道に分ちて時機を度す[無量楽]
- 礼念して身を観ずれば罪障を除きたまふ[願往生]
- ただこれ発願慈悲の極まりなり[無量楽]
- 一切時中に法界を縁じ[願往生]
- 六道を摂取して身中に現じたまふ[無量楽]
- 眼に見耳に聞き心に事を内る[願往生]
- 声を尋ねて苦を救ふこと刹那のあひだなり[無量楽]
- 天冠の化仏高さ千里なり[願往生]
- 慈恩を念報してつねに頂戴したまふ[無量楽]
- 眉間の毫相に七宝の色あり[願往生]
- 色々に八万四千の光あり[無量楽]
- 光々の化仏・菩薩衆[願往生]
- 神通を極楽界に遍満す[無量楽]
- 身は光明をなして紫金色なり[願往生]
- 内外映徹して明鏡のごとし[無量楽]
- 一切の光明は瓔珞のごとし[願往生]
- 遍身に交珞して鈴珮を垂る[無量楽]
- 両手は繊円にして雑華の色なり[願往生]
- つねにこの手をもつて衆生を接したまふ[無量楽]
- 足を挙ぐれば千輪宝地に印す[願往生]
- 足を下ろせば金華世界に満つ[無量楽]
- 本住・他方行坐の処[願往生]
- 触るるものすなはち無生忍を悟る[無量楽]
- 地前・地上元無二なり[願往生]
- 根の利鈍に随ひて位を超増す[無量楽]
- 念々時中につねに証を得[願往生]
- いまだ功を施すことを得ざるにまさに得悟す[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 畢命まで同生誓ひて退かざれ[無量楽]
- かくのごとく快楽の地に逍遥す[願往生]
- さらに何事を貪りてか生ずることを求めざらん[無量楽]
- 苦を救ふに身を分ちて平等に化す[願往生]
- 化し得てはすなはち弥陀国に送り[無量楽]
- 衆等ことごとく大悲力を蒙る[願往生]
- 身を砕きて慚謝して慈恩を報ぜよ[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 観音引接して弥陀を見しめたまふ[無量楽]
【22】
- 勢至菩薩威光大なり[願往生]
- 身色相好観音に等し[無量楽]
- 身上の光明法界に遍す[願往生]
- 照らす処みな同じく紫金色なり[無量楽]
- 有縁の衆生光照を蒙りて[願往生]
- 智慧を増長して安楽に生ず[無量楽]
- 華冠を頂戴して瓔珞を垂る[願往生]
- 宝瓶より光出でて希琦を現ず[無量楽]
- 勢至行く時法界を震はす[願往生]
- 震ふ処に蓮華自然に出づ[無量楽]
- 蓮華の荘厳極楽のごとし[願往生]
- 一切の仏国みなかくのごとし[無量楽]
- 坐する時先づ弥陀国を動かし[願往生]
- 後に上下塵沙の刹を震ふ[無量楽]
- 一々の刹土に分身集まる[願往生]
- みなこれ弥陀の三化身なり[無量楽]
- 化仏・観音・勢至集まりて[願往生]
- 虚空極楽の上に側塞す[無量楽]
- おのおの蓮華百宝の座に坐して[願往生]
- 異口同音に妙法を説きたまふ[無量楽]
- 極楽の衆生見聞して益あり[願往生]
- 常倫の諸地の上に超証せり[無量楽]
- 大きに利益を集む塵沙の衆[願往生]
- 聴法し供養して諸劫を経[無量楽]
- このゆゑにかの国を極楽と名づく[願往生]
- あまねく同生に勧むつねに憶念すべし[無量楽]
【23】
- 一切時中に面を西に向かへ[願往生]
- 心にかの弥陀の身を見たてまつると想へ[無量楽]
- 地上の荘厳無億数なり[願往生]
- 宝楼・林樹瓔珞を垂る[無量楽]
- 正坐跏趺して往生すと想へ[願往生]
- ただちに華池大会のなかに注まりて[無量楽]
- 華中に入ると想へ華合すと想へ[願往生]
- すなはち華開けて仏身を見たてまつると想へ[無量楽]
- 弥陀を見たてまつるに光に雑色あり[願往生]
- 光々自身をあひ照らし来ると想へ[無量楽]
- また自身を慈光照らすと想へ[願往生]
- すなはち籠々として心眼開くと想へ[無量楽]
- 虚空の化仏衆を見たてまつると想へ[願往生]
- 林樹の天楽を奏し[無量楽]
- 水・鳥・流波の妙法を宣ぶるを聞くと想へ[願往生]
- 心々専注すれば想成ぜしむ[無量楽]
- 注想成ずる時宝国現じ[願往生]
- すなはち化仏来りて加備したまふことを得[無量楽]
- 観音・勢至身無数なり[願往生]
- つねにこの行人の辺に来至したまふ[無量楽]
【24】
- 般舟三昧楽[願往生]
- 専心に仏を想へば見たてまつること疑なし[無量楽]
- 仏衆生の流浪久しくして[願往生]
- 無明の障重く開悟しがたきことを知りたまへり[無量楽]
- 仏大を観ぜんに周遍しがたきことを恐れて[願往生]
- さらに教へて小を観じて池中に在かしむ[無量楽]
- 一の蓮華の百宝の葉に[願往生]
- 丈六の化仏華台に坐したまふと想へ[無量楽]
- 身に大小ありといへどもよく障を除く[願往生]
- 観音・勢至等同なることしかなり[無量楽]
- 四種の威儀につねに自策すれば[願往生]
- 命尽きて須臾に自然に帰す[無量楽]
- 自然はすなはちこれ弥陀国なり[願往生]
- 究竟常安にして退く時なし[無量楽]
- たとひ百年を尽せども一日のごとし[願往生]
- 一日は須臾なりなんぞ期するに足らん[無量楽]
【25】
- 上品上生の凡夫等[願往生]
- 持戒・念仏・誦経もつぱらにして[無量楽]
- 一切時中につねに勇猛なれば[願往生]
- 臨終に聖衆みづから来迎したまふ[無量楽]
- 観音・大勢華を擎げて至り[願往生]
- 一時に手を接りて金台に上らしめたまふ[無量楽]
- 無数の化仏・菩薩衆[願往生]
- 頭を摩でて讃歎し仏に随ひて去く[無量楽]
- 一念のあひだに仏国に到りて[願往生]
- すなはち真容の菩薩衆と現ず[無量楽]
- 光明・宝林みな法を説く[願往生]
- 時に当りてすなはち無生忍を悟る[無量楽]
- 須臾に他方の仏に歴事して[願往生]
- 一念に帰還して千証を得[無量楽]
【26】
- 上品中生の凡夫等[願往生]
- 読誦・念仏しもつぱら持戒し[無量楽]
- 一日七日ともに回向すれば[願往生]
- 臨終に聖衆みな来現し[無量楽]
- 観音・大勢華を擎げて立ちたまふ[願往生]
- 行者すなはち紫金台に上れば[無量楽]
- 千の化仏と同時に讃じたまふ[願往生]
- 仏に従ひて須臾に宝池に入る[無量楽]
- 一宿に障尽きて華開発す[願往生]
- 仏を見たてまつりてすなはち金台より下りんと欲するに[無量楽]
- 足いまだ地に至らざるに華足を承け[願往生]
- 仏金光を放ちて来りて身を照らしたまふ[無量楽]
- ただちに弥陀仏の前に到りて立ち[願往生]
- 仏を讃ずること七日にして無生を得[無量楽]
- 須臾に他方の仏に歴事して[願往生]
- 百千の三昧門を証得す[無量楽]
- しばらくの時のあひだに三劫を経て[願往生]
- すなはち明門歓喜地に入る[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 持戒・作善して推閑することなかれ[無量楽]
- 推閑すればすなはち輪廻の業を造る[願往生]
- 弥陀の浄土にたれをしてか去かしめん[無量楽]
- 湯火身を焼けば急にみづから撥ふ[願往生]
- 他人推縁の事を待つことなし[無量楽]
- 貪瞋の火宅は相焼の苦あり[願往生]
- 障重く心頑なにしていまだ痛を覚せず[無量楽]
- 痛を覚すればすなはち愚痴の業を断じ[願往生]
- 悔心慚愧して安楽に生ず[無量楽]
- 安楽はすなはちこれ金剛地なり[願往生]
- 凡夫六道永く名すらなし[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 極楽は清閑にして実にこれ精なり[無量楽]
【27】
- 上品下生の凡夫等[願往生]
- 深く因果を信じて非を生ずることなかれ[無量楽]
- 三業の起行は驕慢多し[願往生]
- ただ無上菩提の心を発す[無量楽]
- 心を回して念々に安楽に生ぜんとすれば[願往生]
- 終時にすなはち金華の至るを見る[無量楽]
- 五百の化仏・観音等[願往生]
- 一時に手を接りて華中に入らしめたまふ[無量楽]
- 一念に華に乗じて宝池のうちにあり[願往生]
- 一日一夜に宝華開く[無量楽]
- 華開けて仏を見たてまつれども微々の障あり[願往生]
- 三七以後にはじめて分明なり[無量楽]
- 耳に衆声を聴きて心に悟を得[願往生]
- 他方に歴事して授記を蒙る[無量楽]
- 十劫須臾に覚せずして尽き[願往生]
- 進みて明門歓喜地に入る[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 名を尽すを期となして疑を生ずることなかれ[無量楽]
- もしこれ釈迦の真の弟子ならば[願往生]
- 誓ひて仏語を行じて安楽に生ぜよ[無量楽]
- 悠々として他語を信ずることを得ざれ[願往生]
- 縁に随ひて病を治すおのおの方によれ[無量楽]
- たちまちに災危に遇ひて身みづから急なれば[願往生]
- 道俗千重するもいまだ救ふことあたはず[無量楽]
- 口に事空を説けども心に怨を行ず[願往生]
- 是非人我山岳のごとし[無量楽]
- かくのごとき人には近づくべからず[願往生]
- 近づけばすなはち長劫の苦に輪廻す[無量楽]
- 耳を側て心を傾けつねに採訪して[願往生]
- 今身に道を修して無生を得よ[無量楽]
- もしこの法の希奇の益を聞かば[願往生]
- 身命を顧みずしてかならず得ることを求めよ[無量楽]
- もしよくもつぱら行じて命を惜しまざれば[願往生]
- 命断えて須臾に安楽に生ず[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 念仏はすなはちこれ涅槃の門なり[無量楽]
【28】
- 中品上生の凡夫等[願往生]
- ひとへに声聞・縁覚の行を学す[無量楽]
- 戒・定・慈悲つねに勇猛にして[願往生]
- 一心に回して安楽に生ぜんと願ずれば[無量楽]
- 終時に化仏・声聞到り[願往生]
- 七宝の蓮華行者の前にあり[無量楽]
- 仏光明を放ちて身頂を照らしたまふ[願往生]
- 行者みづから見れば華台に上る[無量楽]
- 頭を低れて仏を礼するときはこの国にあり[願往生]
- 頭を挙げをはれば弥陀界に入る[無量楽]
- かしこに到りて華開けてすなはち仏を見たてまつる[願往生]
- 四諦を説くを聞きて真如を証す[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 実にこれ弥陀願力の恩なり[無量楽]
【29】
- 中品中生の凡夫等[願往生]
- 一日一夜衆戒を持つ[無量楽]
- この戒福の善根力を回して[願往生]
- ただちに弥陀の安養国に到る[無量楽]
- 臨終に化仏・師僧現れ[願往生]
- 七宝の華来りて行者の前にあり[無量楽]
- 行者華を見て心踊躍し[願往生]
- すなはち華台に上り仏に随ひて去く[無量楽]
- 一念のあひだに宝国に入りて[願往生]
- ただちに八徳宝池のなかに入る[無量楽]
- 池内の蓮華無億数なり[願往生]
- ことごとくこれ十方の同行人なり[無量楽]
- 七日七夜にして蓮華発く[願往生]
- 華開けて仏を見たてまつり初真を得[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 勤修実行にして人を欺かざれ[無量楽]
【30】
- 中品下生の凡夫等[願往生]
- 父母に孝養し人に信を行ず[無量楽]
- 臨終に善知識に遇値ふに[願往生]
- ために極楽弥陀の願を説く[無量楽]
- 説くを聞きて合掌して心を回して向かへば[願往生]
- 念に乗じてすなはち宝池のなかに到る[無量楽]
- 百宝の蓮華台上の座にして[願往生]
- 七七日の後に宝華開く[無量楽]
- 華開けて仏と塵沙の衆とを見たてまつり[願往生]
- 一劫以後に無生を証す[無量楽]
- 無生はすなはちこれ阿羅漢なり[願往生]
- 羅漢心を回して大乗に向かふ[無量楽]
- 一発以去小心滅して[願往生]
- ただちに菩提に至るまで退くことあることなし[無量楽]
- このゆゑに天親『論』(浄土論・意)を作りて説かく[願往生]
- 「二乗の心種永く生ずることなし[無量楽]
- ゆゑにいふ大乗善根界[願往生]
- 畢竟じて永く譏嫌の過を絶つ」と[無量楽]
- 大小の凡夫平等に摂して[願往生]
- かつ六道・三塗の難を避る[無量楽]
- 願じて弥陀仏国のうちに住せよ[願往生]
- 証と不証とまた心閑かなり[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- たちまちに生死を超えて娑婆を出でよ[無量楽]
【31】
- 下品上生の凡夫等[願往生]
- つぶさに十悪を造りて余の善なし[無量楽]
- 無明を増長してただ意を快くし[願往生]
- 他の修福を見て非毀を生ず[無量楽]
- かくのごとき愚人覚悟しがたきは[願往生]
- まことに知識の悪強縁による[無量楽]
- ただ目の前に酒肉を貪ることを知りて[願往生]
- 地獄にことごとく名を抄することを覚らず[無量楽]
- 一たび泥犂に入りて長苦を受くるとき[願往生]
- はじめて人中の善知識を憶す[無量楽]
- 罪人臨終に重病を得て[願往生]
- 神識昏狂し心倒乱せり[無量楽]
- 地獄芥々として眼前に現ずるとき[願往生]
- 白き汗流れ出でて手空を把る[無量楽]
- かくのごとき困苦たれかよく救はん[願往生]
- かならずこれ知識・弥陀の恩なり[無量楽]
- 手に香炉を執りて教へて懺悔せしめ[願往生]
- 教へて合掌して弥陀を念ぜしむ[無量楽]
- 一声の称仏衆苦を除き[願往生]
- 五百万劫の罪消除す[無量楽]
- 化仏・菩薩声を尋ねて到り[願往生]
- 「われゆゑに華を持してなんぢを迎へ来る」と[無量楽]
- 行者仏の光明を見て喜ぶ[願往生]
- すなはち七宝蓮華の上に坐し[無量楽]
- 仏に従ひて須臾に宝国に還り[願往生]
- 到りてすなはちただちに宝池のなかに入る[無量楽]
- 七七に華開けて仏を見たてまつることを得[願往生]
- 観音・大勢慈光をもつて照らす[無量楽]
- 眼目晴明にして心得悟し[願往生]
- 合掌してはじめて菩提心を発す[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 三塗を脱るることを得るは知識の恩なり[無量楽]
- もし知識の教へて仏を称せしむるにあらずは[願往生]
- いかんが弥陀国に入ることを得ん[無量楽]
【32】
- 下品中生の凡夫等[願往生]
- 破戒・偸僧して衆罪を造り[無量楽]
- 邪命説法して慚愧なし[願往生]
- 戒と因果とを破し師僧を打つ[無量楽]
- かくのごとき愚人死に臨む日[願往生]
- 節々酸疼して錐刀をもつて刺すがごとし[無量楽]
- 地獄の猛火みな来り逼む[願往生]
- 時に当りてすなはち善知識の[無量楽]
- 大慈悲を発して教へて念仏せしむるに値ふ[願往生]
- 地獄の猛火風と変じて涼し[無量楽]
- 天華旋転して風に随ひて落つ[願往生]
- 化仏・菩薩ありて華上に乗らしむ[無量楽]
- 行者すなはち天華の上に坐して[願往生]
- 仏に従ひて須臾に宝池に入る[無量楽]
- 障重くして華開くるに六劫を経[願往生]
- 華開けてはじめて菩提心を発す[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 身を砕きて釈迦の恩を慚謝すべし[無量楽]
【33】
- 下品下生の凡夫等[願往生]
- 十悪・五逆みなよく造る[無量楽]
- かくのごとき愚人多く罪を造りて[願往生]
- 地獄を経歴して劫を窮むることなし[無量楽]
- 臨終にたちまちに善知識の[願往生]
- ために妙法を説きて安穏ならしむるに遇ふ[無量楽]
- 刀風解くる時貪りて痛を忍び[願往生]
- 教へて念仏せしむるに念ずることあたはず[無量楽]
- 善友告げていはく「もつぱら合掌して[願往生]
- 正念にしてもつぱら無量寿と称すべし」と[無量楽]
- 声々連注して十念を満たし[願往生]
- 念々に五逆の障を消除す[無量楽]
- 謗法と闡提と十悪を行ずるものも[願往生]
- 回心念仏すれば罪みな除こる[無量楽]
- 病者の身心覚して醒悟すれば[願往生]
- 眼前にすなはち金華の現ずるあり[無量楽]
- 金華の光明行者を照らす[願往生]
- 身心歓喜して華台に上る[無量楽]
- 華に乗じて一念に仏国に至り[願往生]
- ただちに大会仏前の池に入る[無量楽]
- 残殃いまだ尽きず華中に合す[願往生]
- 十二劫の後にはじめて華開く[無量楽]
- 華内に坐せる時に微苦なし[願往生]
- 色界三禅の楽に超過せり[無量楽]
- 般舟三昧楽[願往生]
- 地獄に入るを勉れて金蓮に坐せよ[無量楽]
- むしろ金華に合せられて百千劫なるも[願往生]
- 地獄の須臾のあひだにあたはず[無量楽]
- 観音・大勢慈光をもつて照らし[願往生]
- 徐々にために安心の法を説きたまふ[無量楽]
- 行者希有の法を聞くことを得て[願往生]
- 智慧の法眼豁然として開く[無量楽]
- 法眼開くる時仏会を見て[願往生]
- すなはち無上菩提心を発す[無量楽]
- あるいは坐しあるいは立し遊行して観るに[願往生]
- 到る処ただ説法の声のみを聞く[無量楽]
- 身心毛孔みな得悟す[願往生]
- 菩薩聖衆みな充満せり[無量楽]
- みづから神通をなしてかの会に入る[願往生]
- 本を憶するに娑婆知識の恩なり[無量楽]
- もし釈迦の勧めて念仏せしむるにあらずは[願往生]
- 弥陀の浄土なにによりてか見ん[無量楽]
- 心に香華を念じてあまねく供養し[願往生]
- 長時長劫に慈恩を報ぜよ[無量楽]
- あまねく十方の生死界に勧む[願往生]
- 同心に悪を断じてことごとくすべからく来るべし[無量楽]
- 一たび涅槃常住の国に入りぬれば[願往生]
- 後際を徹窮してさらになんの憂ひかあらん[無量楽]
- 念々時中につねに証悟して[願往生]
- 十地の行願自然に成ず[無量楽]
- 地々の慈悲巧方便[願往生]
- 仏をもつて師となせば錯悟なし[無量楽]
【34】
- 定善は『経』(観経)によるに十三観[願往生]
- 一々につぶさに荘厳の事を説く[無量楽]
- 行住坐臥につねに観察せよ[願往生]
- つねに念ずれば心眼籠々として見る[無量楽]
- 散善九品『経』(観経)によりて讃ず[願往生]
- 一々回向すればみな往くことを得[無量楽]
- 定善の一門は韋提請じ[願往生]
- 散善の一行は釈迦開きたまふ[無量楽]
- 定散ともに回すれば宝国に入る[願往生]
- すなはちこれ如来(釈尊)の異の方便なり[無量楽]
【35】
- 韋提はすなはちこれ女人の相[願往生]
- 貪瞋具足の凡夫の位なり[無量楽]
- 娑婆を厭捨して仏国を求むれば[願往生]
- すなはち極楽荘厳の界を現ず[無量楽]
- 極楽を見ることを得て心歓喜し[願往生]
- さらに弥陀を覩たてまつりて法忍を成ず[無量楽]
- 五百の女人同じく仏にまうす[願往生]
- 「誓願す同じく安楽国に生ぜん」と[無量楽]
- その時に世尊みな印記したまふ[願往生]
- 「同じく往生を得て三昧を証せん」と[無量楽]
- 釈・梵・護世空に臨みて聴き[願往生]
- また同じく発願して安楽に生ぜんと[無量楽]
【36】
- あまねく有縁に勧むつねに念仏すべし[願往生]
- 観音・大勢同学となる[無量楽]
- もしよく念仏するものは人中の上なり[願往生]
- 願はくは同じく諸仏の家に生ずることを得て[無量楽]
- 長劫長時に仏辺にして証す[願往生]
- 道場の妙果あにはるかなりとなさんや[無量楽]
後述
【37】 もろもろの行者にまうさく、凡夫の生死は貪るべからざれども厭はず、弥陀の浄土は軽んずべからざれども欣はず。 厭へばすなはち娑婆永く隔たり、欣へばすなはち浄土つねに居す。 隔たればすなはち六道の因亡じ、輪廻の果おのづから滅す。
因果すでに亡じぬれば、すなはち形と名とたちまちに絶ゆ。 仰ぎておもんみれば同生の知識等、よくみづから思量せよ。 却きて受生の無際なることを推するに、空性と同時なり。 同時にして心識あり。
もし空界と同時ならずしてありといはば、一切の衆生すなはちこれ因なくしてはじめて出でん。 心識もし本因なくしてありといはば、すなはち事木石に同じからん。 もし木石に同じといはば、すなはち六道の因業なからん。 因業もしなしといはば、凡聖の苦楽因果たれか覚し、たれか知らん。
この道理をもつて推勘すれば、一切の衆生さだめて心識あり。 もし心識あらば、すなはち空際と同時にありてあらん。 もし空際と同時にありといはば、すなはちただ仏と仏とのみ本元を知ることを得たまはん。
行者等知れ、自の身心空際と同時にありてすなはち今身今日に至るまで、悪を断じ貪を除くことあたはず。 一切の煩悩ただ増多なることを覚るべし。 また釈迦・諸仏同じく勧めて、もつぱら弥陀を念ぜしめ極楽を想観せしめて、この一身を尽して命断えてすなはち安楽国に生ぜしめたまふ。
あに長時の大益にあらずや。 行者等ゆめゆめつとめてこれを行ずべし。 つねに慚愧を懐き、仰ぎて仏恩を謝せよ、知るべし。
般舟三昧行道往生讃 一巻