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帰三宝偈

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 本書は、善導大師の著『観経疏』4帖のなか、初めの「玄義分」の巻頭に示された偈頌である。『観経疏』は、善導大師が古今の諸師たちの誤った解釈をただして、『観経』の真意を明らかにされたもので、「玄義分」は、初めに『観経』の奥義を述べられるものである。この偈頌は、まず初めに仏・法・僧の三宝に帰敬する旨を示しつつ、すべて人々に本願の信心をおこすよう勧められたものであることから、『帰三宝偈』あるいは『勧衆偈』と称される。また偈頌は五字一句、四句一行で全部で14行あるので、『十四行偈』ともいう。  その内容は、初めに出家・在家を問わず、菩提心(信心)をおこして生死を超えようと勧められる。ついでみずからひろく仏・法・僧の三宝に帰敬して仏力の加護を請われる。さらにみずから本願の法に遇ったことを喜ぶとともに、『観経疏』をつくって、釈迦・弥陀二尊の真意を明らかにしたいという固い決意と願いを述べられている。そして最後に、この尊い法の功徳をわけへだてなく人々に伝え、共に信心をおこして安楽国に往生しようと回向の意を示されている。

帰三宝偈

   帰三宝偈


【1】

 道俗時衆等、おのおの無上の心を発せども、
生死はなはだ厭ひがたく、仏法また欣ひがたし。
ともに金剛の志を発して、横に四流を超断し、
弥陀の界に願入して、帰依し合掌して礼したてまつれ。

【2】

 世尊、われ心を一つにして、尽十方の、
法性真如海報化等の諸仏と、
一々の菩薩の身、眷属等の無量なると、
荘厳および変化と、十地・三賢海の、
時劫の満と未満と、智行の円と未円と、
正使の尽と未尽と、習気の亡と未亡と、
功用と無功用と、証智と未証智と、
妙覚および等覚と、まさしく金剛心を受けて、
相応一念ののちの、果徳涅槃のものとに帰命したてまつる。

【3】

 われらことごとく、三仏菩提尊に帰命したてまつる。
無碍の神通力をもつて、冥加して、願はくは摂受したまへ。

【4】

 われらことごとく、三乗等の賢聖
仏の大悲心を学びて、長時に退くことなきひとに帰命したてまつる。
請ひ願はくは、はるかに加備して、念々に諸仏を見せしめたまへ。

【5】

 われら愚痴の身、曠劫よりこのかた流転して、
いま、釈迦仏の、末法の遺跡
弥陀の本誓願、極楽の要門に逢へり。
定散等しく回向して、すみやかに無生身を証せん。

【6】

 われ、菩薩蔵、頓教一乗海によりて、
偈を説きて三宝に帰し、仏心と相応せり。
十方恒沙の仏、六通もつてわれを照知したまへ。
いま二尊の教に乗じて、広く浄土の門を開く。

【7】

 願はくはこの功徳をもつて、平等に一切に施し、
同じく菩提心を発して、安楽国に往生せん。