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願生偈

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 本書は、天親菩薩の著『無量寿経優婆提舎願生偈』から、諷誦に用いられる偈頌を別出したものである。『願生偈』とは、天親菩薩ご自身が無量寿経(浄土三部経)によって浄土を願生する旨を述べた偈頌という意味である。偈頌は五字一句、四句一行で全部で24行になっている。

 その内容は、初めに、天親菩薩自身が、一心に尽十方無礙光如来(阿弥陀仏)に帰命し、浄土の往生を願う旨を述べられる。ついで、無量寿経(浄土三部経)に示されている真実功徳相によってこの偈を説き、仏の教えにかなう旨を述べられる。
 さらに、安楽浄土の国土荘厳十七種と仏荘厳八種と聖衆荘厳の四種と、合せて三厳二十九種の荘厳功徳が讃詠されている。そして最後に回向の意を示して結ばれている。すなわち菩薩自身が願生するだけでなく、あまねく多くの人々とともに往生することを願う旨を示されているのである。

願生偈

   願生偈


【1】

 世尊、われ一心に尽十方無碍光如来に帰命したてまつりて、
安楽国に生ぜんと願ず。

【2】

 われ修多羅の真実功徳相によりて、
願偈を説きて総持して、仏教と相応せん。

【3】

 かの世界の相を観ずるに、三界の道に勝過せり。
究竟して虚空のごとく、広大にして辺際なし。
正道の大慈悲、出世の善根より生ず。
浄光明の満足せること、鏡と日月輪とのごとし。
もろもろの珍宝の性を備へて、妙荘厳を具足せり。
無垢の光炎熾んにして、明浄にして世間を曜かす。
宝性功徳の草、柔軟にして左右に旋れり。
触るるもの勝楽を生ずること、迦旃隣陀に過ぎたり。
宝華千万種にして、池・流・泉に弥覆せり。
微風、華葉を動かすに、交錯して光乱転す。
宮殿・もろもろの楼閣にして、十方を観ること無碍なり。
雑樹に異の光色あり、宝欄あまねく囲繞せり。
無量の宝交絡して、羅網虚空にあまねし。
種々の鈴、響きを発して、妙法の音を宣べ吐く。
華と衣との荘厳を雨らして、無量の香あまねく薫ず。
仏慧明浄なること日のごとくにして、世の痴闇冥を除く。
梵声の悟深遠にして、微妙なり、十方に聞ゆ。
正覚の阿弥陀法王、よく住持したまへり。
如来浄華の衆は、正覚の華より化生す。
仏法の味はひを愛楽し、禅三昧を食とす。
永く身心の悩みを離れて、楽しみを受くることつねに間なし。
大乗善根の界は、等しくして譏嫌の名なし、
女人および根欠、二乗の種生ぜず。
衆生の願楽するところ、一切よく満足す。
ゆゑにわれ願はくは、かの阿弥陀仏国に生ぜん。

【4】

 無量大宝王、微妙の浄華台にいます。
相好の光一尋にして、色像、群生に超えたまへり。
如来の微妙の声、梵の響き十方に聞ゆ。
地・水・火・風・虚空に同じて、分別なし。
天・人不動の衆、清浄の智海より生ず。
〔如来は〕須弥山王のごとく、勝妙にして過ぎたるものなし。
天・人・丈夫の衆、恭敬して繞りて瞻仰したてまつる。
仏の本願力を観ずるに、遇うて空しく過ぐるものなし、
よくすみやかに功徳の大宝海を満足せしむ。

【5】

 安楽国は清浄にして、つねに無垢の輪を転ず、
化仏・菩薩の日、須弥の住持するがごとし。
無垢荘厳の光、一念および一時に、
あまねく諸仏のを照らし、もろもろの群生を利益す。
天の楽と華と衣と妙香等を雨らして供養し、
諸仏の功徳を讃ずるに、分別の心あることなし。
なんらの世界にか、仏法功徳の宝なからん。
われ願はくは、みな往生して、仏法を示すこと仏のごとくせん。

【6】

 われ論を作り偈を説きて、願はくは弥陀仏を見たてまつり、
あまねくもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。