自余の九処
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じよのくしょ
屎泥処(しでいしょ)…極苦処(ごくくしょ)以外の九つの別処。 (要集 P.800)
『浄土真宗聖典(注釈版)七祖篇』本願寺出版社
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十六小地獄(じゅうろくしょうじごく、梵: utsada〈増〉[1])は、仏教の地獄に伝わる八大地獄の周囲に存在する小規模の地獄。眷族地獄[2]、増地獄、別所とも[3]。
概要
最初期の仏教から無間地獄の観念が成立しており、『スッタニパータ』ではすでにアッブダ地獄(abbuda)、ニラッブダ地獄(nirabbuda)など複数の地獄が数えられていた[1]。「十八泥梨経」には、18の地獄の存在が説明されている[1]。初期の経典が成立し体系化されると、八大地獄の概念とともに黒沙、沸屎、五百釘、飢、渇、一銅釜、多銅釜、石磨、膿血、量火、灰河、鉄丸、釿斧、豺狼、剣樹、寒の十六小地獄(十六遊増地獄)の概念が成立した(「長阿含経」第十九地獄品 [長阿含世記経])[1][4]。
十六小地獄の叙述は経典によってまちまちである[1]。これは、一般に信じられていた地獄観を仏教の地獄観に取り入れようとした結果付属地獄が建てられたもので、名称は必ずしも一定したものではなかった[5]。『立世阿毘曇論』(八)では十寒・八熱・十六増、『長阿含経』では八寒・八熱・十六増、『俱舎論』以降は八寒・八熱の地獄のうち八熱地獄に十六小地獄という地獄観が定着した[5]。
日本においては『俱舎論』の叙述に基づいた地獄絵図が描かれることが多い[1]。八大地獄の東西南北に四つの門があり、門一つごとに小地獄が4種類付随し、合計で十六種類あるとされている[6]。『俱舎論』(巻十一)によれば、それぞれの門に煻煨、屍糞、鋒刃、烈河という小地獄(増)があり、鋒刃にはさらに刀刃路、剣葉林、鉄刺林の三つの地獄があるとされた[7][8]。これらの地獄のうちほとんどはヒンドゥー教の神話に由来するものであり、たとえば烈河増は原文では「ヴァイタラニー河」(nadī Vaitaraṇi)であり、これは『マハーバーラタ』に出てくる大地と下界を隔てる河の名と同一である[7]。
『往生要集』の地獄叙述でたびたび引用される『瑜伽師地論』では、別処(小地獄)について、煻煨、死屍糞泥、刀剣の刃の道と刃の葉の林(刀剣・刃路)、設拉末梨(śālmalī; 刺)の林があり、灰水のたぎる河が流れ、これら4つの園をもって1つの別処であると説明している[7]。ただし、玄奘による漢訳ではサンスクリット原文で繰り返し用いられている語句がそれぞれ別の語句に置き換えられ、訳注と思われる原文にはない文章が追加されている[7]。
八大地獄の中にそれぞれ八つの炎火・寒氷の地獄があるとする説もあり、『諸経要集』(十八)では、さらにこれに加えて阿鼻地獄の中に十八小地獄があるとされる[6]。八大地獄と各十六小地獄内の128の地獄を合わせて「一百三十六地獄」(いっぴゃくさんじゅうろくじごく)と呼ばれる[9]。
これらの地獄に落ちた罪人は「地獄罪人」「地獄餓鬼」「地獄有情」などとよばれる[8]。小地獄では、罪人は大地獄で責め苦を受けた上にさらに苦しみを受ける[8]。条件に合った亡者の他に、大地獄から逃げてきた亡者が迷い込むこともある。
なお、特に断りがない場合、以下に述べる種類と描写は「正法念処経」の記述に従う。ただし出典として草野巧『地獄』新紀元社(1995)を用いている箇所が多々ある。
等活地獄
必要がないのに生き物をむやみやたらと殺す、などの「殺生」の罪で落とされる等活地獄に付随する小地獄。「刀を使って殺生した」などの細かい条件によって十六種類の地獄が用意されている。ただし、その内9種類は、「正法念処経」においては名前のみで内容が記されていない。
十六小地獄とは、仏教の地獄に伝わる八大地獄の周囲に存在する小規模の地獄で、地獄に落ちた亡者の中でもそれぞれ設定された細かい条件(生前の悪事)に合致した者が苦しみを受ける。条件は当時の倫理観や仏教の教えに沿っているため、中には現在の倫理観や社会風俗などに合わないものも存在する。なお、特に断りがない場合、種類と描写は「正法念処経」の記述に従う。
等活地獄に付随する小地獄で、内容が記されている分類は、次の7種。
屎泥処(しでいしょ)
対象は鳥や鹿を殺した者。沸騰した銅と煮えたぎっている糞尿が沼のようにたまっており、亡者達はその中で苦い屎を食わされ、金剛の嘴を持つ鳥に体を食い破られる。
刀輪処(とうりんしょ)
対象は刀を使って殺生をした者。10由旬の鉄の壁に囲まれており、地上からは猛火、天井から熱鉄の雨が亡者を襲う。また、樹木から刀の生えた刀林処があり、両刃の剣の雨も降り注ぐ。
瓮熟処(おうじゅくしょ)
対象は動物達を殺して食べた者。 獄卒が罪人を鉄の瓮(かめ)に入れて煮る。瓮熱処(おうねつしょ)とも呼ばれる[10]。
多苦処(たくしょ)
対象は人を縄で縛ったり、杖で打ったり、断崖絶壁から突き落としたり、子供を恐れさせたり、拷問で人々に大きな苦痛を与えた者。十千億種類以上の苦しみが用意されており、生前の悪行に応じた形で苦しめる。
闇冥処(あんみょうしょ)
対象は信仰宗教の為、羊や亀を殺した者。真っ暗闇で闇火(あんか)や熱風が罪人を焼いて苦しめる。
不喜処(ふきしょ)
対象は法螺貝を吹くなど、大きな音を立てて驚かせたうえで、鳥獣を殺害した者。昼夜を問わず火炎が燃え盛り、熱炎の嘴の鳥、犬、狐などの獣によって肉や骨の髄まで食われる。
極苦処(ごくくしょ)
対象は生前にちょっとした事で腹を立ててすぐに怒り、暴れ回り、物を壊し、勝手気ままに殺生をした者。常に鉄火で焼かれ、獄卒に生き返らされては険しい断崖絶壁の下に突き落とされることが繰り返される。
名前のみ伝わっている小地獄
衆病処(しゅうびょうしょ)、両鉄処(りょうてつしょ)、悪杖処(あくじょうしょ)、黒色鼠狼処(こくしょくそろうしょ)、異異回転処(いいかいてんしょ)、苦逼処(くひつしょ)、鉢頭麻鬢処(はちずまびんしょ)、陂池処(ひちしょ)、空中受苦処(くうちゅうじゅくしょ)は、名前のみで内容は記されていない。
その他の小地獄
鉄窟地獄(てっくつじごく)。鉄崛地獄とも呼ばれ[11]、「正法念処経」には記されていないが、「観仏三昧海経」にて伝わっている小地獄[11]。『十往心論』(一)では黒縄地獄を指す言葉として用いられている[11]。
黒縄地獄
殺生に加えて「盗み」の悪行が加わると落とされる黒縄地獄に付随する小地獄。ここにも十六種類の小地獄があると伝わる一方で、「正法念処経」には3種類の名前・内容しか記されていない。 等活地獄の10倍の苦しみ。
等喚受苦処(とうかんじゅくしょ)
対象は生前に間違った法を説いた者、崖から投身自殺した者。燃える黒縄に縛られて、計り知れないほど高い崖の上から鉄刀が突き出す熱した地面に落とされる。その上で燃える牙を持つ犬に食い殺される。黒縄地獄にありながら、落ちる条件は「盗み」ではなく「嘘」や「邪見」にあたるのだが、これは「盗み」の身でありながら「嘘」を行った罪による。
旃荼処(せんだしょ)
対象は病人が用いるべき薬品を病人でもないのに用いた中毒患者(阿片など)。烏、鷺、猪などが罪人の眼球や舌をつついて抜き出し、獄卒たちが杵や大斧で罪人を打ち据える。
畏熟処(いじゅくしょ)・畏鷲処(いじゅうしょ)
対象は貪欲のために人を殺し、飲食物を奪って飢え渇かせた者。鉄の棘が生えた地面を、杖、火炎の鉄刀、弓矢などを持った獄卒に追い回され、休む間もなくいつまでも走らされる。転倒すると金棒で何度も殴られ、水をかけられる。
衆合地獄
殺生・盗みに加えて、倒錯した性嗜好などの「邪淫」の悪行が加わると落とされる衆合地獄に付随する小地獄。「妻以外の女性と性行為を行った」などの細かい条件によって十六種類の地獄が用意されている。なお、特に断りがない場合、種類と描写は「正法念処経」の記述に従う。 邪淫は夫、妻で無い者と性行為をする事は勿論、夫や妻でも不適当とされる行為(姦淫)も含まれる。衆合地獄の苦しみは、黒縄地獄の10倍とも言われる。刀で出来た林(刀葉林)があるのが特徴。上には絶世の美女が「抱いてほしい」と誘惑するが、上るたびに刀葉林で切り裂かれる。苦労して上っても美女は下に移動しており、永遠に出会うことは無い。なお、距離の単位となる1由旬は7~14kmである。
悪見処(あくけんしょ)
他人の子供に性的虐待を行った罪に対応す