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地獄

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じごく (ぢごく)

 梵語ナラカ(naraka)、またはニラヤ(niraya)の漢訳。ナラカの音写は那落迦(ならか)奈落(ならく)、ニラヤの音写は泥囉夜(ないらや)泥黎耶(ないりや)三悪道(さんまくどう)・五趣・六道・十界の一で、自らの罪業の結果として衆生(しゅじょう)が趣く苦しみのきわまった世界。

経論によって種々に説かれるが、無間(むけん)・八熱(八大)・八寒・孤独などの地獄があり、みな閻浮提(えんぶだい)の下二万(または三万二千)由旬(ゆじゅん)のところにあるとされる。→六道(ろくどう)。

出典(教学伝道研究センター編『浄土真宗聖典(注釈版)第二版』本願寺出版社
『浄土真宗聖典(注釈版)七祖篇』本願寺出版社

区切り線以下の文章は各投稿者の意見であり本願寺派の見解ではありません。

地獄については『往生要集』(要集 P.798)に詳しく説かれている。

  • 芝居では、舞台下の地下のことで、照明の不備だった江戸時代は舞台の下は真暗で地獄のようだというので奈落(ならく)と呼ばれた。

◆ 参照読み込み (transclusion) JDS:地獄

じごく/地獄

一般的には「死後、自分の犯した罪により、罪人が赴かねばならない地下の牢獄のことで、獄卒(鬼)により様々な苦果を受けるところ」とされる。仏教ではⓈⓅnaraka(奈落、那落、㮈落迦)またはⓈⓅniraya(泥犂ないり泥羅夜ないらや、泥黎耶)といい、音写語の文字の落・泥・夜・黎・犂からも知られるように、地下の世界、冥界、不可楽な闇の世界、無幸処という意味を持ち、六道の一でありその最下層とされる。地獄あるいは死後の世界に関しては、当初釈尊はそれを「無記」として直接説くことはなかったと考えられるが、一般社会で流行していた地獄思想を方便として利用した可能性がある。特に釈尊の死後、仏教の中にインド古来の業思想や輪廻思想が入り、地獄思想が導入されることにより独自の他界観、死後の様相が発達していった。中でも後世部派仏教アビダルマ仏教)ではその傾向がますます高まり、現在伝わる仏教地獄観が形成されていった。また仏教地獄思想の特徴を一言で示すことは困難であるが、強いていうなら「地獄寿命を設定した」ことである。一説によると一番短い場所で一兆六千二百億年という長い年月であるが、必ずそこに救いがあり最終的には地獄を脱し成仏できるとする。すなわち、地獄は有限の世界とするのである。なお、キリスト教では「地獄とは救われない魂が永遠に落ちる世界」とするが、中世カトリック教会(旧教)では、永劫の罰責を受ける地獄(インフェルノ)と呵責かしゃくによって浄罪された後、昇天を許される煉獄れんごく(プルガトリウム)があるとされる。しかし、プロテスタント(新教)では免罪符につながる考えとしてそれを認めない。地獄にも様々な種類があり、仏教では、大別すると八熱大地獄、八寒大地獄それに十六小地獄がある。この中、熱地獄は、インドのみならず古代中近東においては風土上の考えから地獄イコール熱というイメージがあり、キリスト教イスラム教でも火に焼かれるという概念が強く、それに基づく名を持つ地獄が多い。これに対し寒地獄の方は、寒地獄と命名しながら仏教の古い年代の資料には熱地獄に相応する記事を示すなど熱地獄に比べ整理されていない。しかし、論書時代になると熱地獄相対するものとして寒地獄という概念が定着する。これも仏教が伝播された地域の風土上の問題を含んでいるといえる。また、十六小地獄とは先の大地獄の傍にある別処としての地獄であるが、これも各資料で各々その内容が異なる。参考までに八熱八寒十六小地獄の代表的なものを以下に示す。八熱大地獄は、①等活Ⓢsaṃjīva②黒縄Ⓢkālasūtra③衆合Ⓢsaṃghāta④叫喚Ⓢraurava⑤大叫喚Ⓢmahāraurava⑥焦熱Ⓢtapana⑦大焦熱Ⓢpratāpana⑧無間(阿鼻)Ⓢavīci。八寒大地獄は、①頞部陀Ⓢarbuda②尼剌部陀Ⓢnirarbuda③頞唽咤Ⓢaṭaṭa④臛臛婆Ⓢhahava⑤虎虎婆Ⓢhuhuva⑥嗢鉢羅Ⓢutpala⑦鉢特摩Ⓢpadma⑧摩訶鉢特摩Ⓢmahāpadma。十六小地獄は、①黒沙②沸屎③五百釘④飢⑤渇⑥一銅釜⑦多銅釜⑧石磨⑨膿血⑩量火⑪灰河⑫鉄丸⑬釿斧⑭豺狼⑮剣樹⑯寒氷。また、先の地獄での呵責の様相から転じて「蟻地獄」や「受験地獄」というように使い、地下の場所という意味から歌舞伎や劇場の地下を奈落とも呼ぶ。


【資料】『長阿含』一九、『起世因本経』二、『俱舎論』八、『正法念処経』、『大智度論』


【執筆者:牧達玄】