平生業成
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へいぜいごうじょう
臨終を待つまでもなく、平生に他力の信心をえたそのときに浄土に生れることが確定すること。 → 業事成弁(ごうじじょうべん)。
『浄土真宗聖典(注釈版)七祖篇』本願寺出版社
区切り線以下の文章は各投稿者の意見であり本願寺派の見解ではありません。
- 親鸞聖人には平生業成の義はあるが直接の「平生業成」の用語例はないことに留意。
- 平生業成
臨終業成に対する語。第十八願の法においては、臨終に往生が決定するのではなく、平生に決定するということ。『真要鈔』には、
- 親鸞聖人の一流においては、平生業成の義にして臨終往生ののぞみを本とせず、不来迎の談にして来迎の義を執せず。ただし平生業成といふは、平生に仏法にあふ機にとりてのことなり。もし臨終に法にあはば、その機は臨終に往生すべし。平生をいはず、臨終をいはず、ただ信心を うるとき往生すなはち定まるとなり。これを即得往生といふ。(真要鈔 P.964)
とあり、『御文章』1帖目2通には、
- さればこの信をえたる位を、経には「即得往生住不退転」と説き、釈には「一念発起入正定之聚」ともいへり。これすなはち不来迎の談、平生業成の義なり。(御文章 P.1085)
等とある。また臨終業成説に対して、安心論題に「平生業成」が設けられている。→安心論題/平生業生
臨終業成に対する言葉。死ぬるまで称名の功徳を積むことによって臨終の一念に往生の業事がはじめて完成するというのが臨終業成説である。生涯の相続した称名の功徳の積み重ねによって臨終に仏や聖衆の来迎を得る。その時に浄土往生の業事・業因が完成するというのが臨終業成説である。したがって来迎を確実なものとするために功徳を積み臨終の一念まで念仏をし続ける必要がある。
法然聖人は『念仏往生要義抄』で、
- 「問ていはく、最後の念仏と、平生の念仏といつれかすぐれたるや。」
の問いに、
- 「答ていはく、たたをなじ事也。そのゆへは、平生の念仏、臨終の念仏とてなんのかはりめかあらん。平生の念仏の死ぬれは、臨終の念仏となり、臨終の念仏ののぶれは、平生の念仏となる也」『和語灯録』「念仏往生要義抄」
と、答えられ念仏に平生と臨終を分けるような考え方を否定されておられた。また次下に、
- 問ていはく、摂取の益をかうふる事は、平生か臨終か、いかむ。
- 答ていはく、平生の時なり。そのゆへは、往生の心まことにて、わか身をうたがふ事なくて、来迎をまつ人は、この三心具足の念仏申す人なり。この三心具足しぬれば、かならず極楽にうまるといふ事は、『観経』の説なり。かかる心さしある人を、阿弥陀仏は八万四千の光明をはなちててらし給ふ也。平生の時てらしはじめて、最後まて捨給はぬなり。かるかゆへに不捨の誓約と申す也。
と、『観経』に説かれる「念仏衆生摂取不捨」を平生の時であるとされおられた。『西方指南鈔』下本「禅勝房との十一箇条問答」には、
- 十声・一声の釈は、念仏を信するやうなり。かるがゆへに、信おば一念に生るととり、行おば一形をはげむべしと、すすめたまへる釈也。また大意は一発心已後の釈を本とすべし。(*)
と、「信おば一念に生るととり」と、されているから、往生の決定する時は信疑決判の平生であると言わねばならない。
法然聖人は、善導大師の『観経疏』「就行立信釈」の「順彼仏願故」の文によって回心されたことは有名である。自らが選択する行業ではなく、仏の本願によって選択されていた行が、口称のなんまんだぶであった。(*)
法然聖人は、
- たとひ別に回向を用ゐざれども自然に往生の業となる。(選択本願念仏集P.1196)
と、本願に選択されている念仏であるから、衆生の側からは回向する必要がないので、なんまんだぶを不回向であるとされていた。
この法然聖人の「不回向」の意を正確に受容し、不回向とは、実は阿弥陀如来の本願力回向であると『浄土論」『浄土論註』の本願力の語に依って法然聖人の真意を考究し顕していかれたのが親鸞聖人であった。そして、法然聖人の「摂取の益をかうぶる事」は、「平生の時」であるというお示しによって、『観経』の「念仏衆生摂取不捨」の文意を領解していかれたのである。この「念仏衆生摂取不捨」であるから、阿弥陀如来の名号を聞信する平生の一念に、浄土往生は決定するというのが「平生業成説」である。
この意を『御消息』では、
- 来迎は諸行往生にあり、自力の行者なるがゆゑに。臨終といふことは、諸行往生のひとにいふべし、いまだ真実の信心をえざるがゆゑなり。また十悪・五逆の罪人のはじめて善知識にあうて、すすめらるるときにいふことなり。真実信心の行人は、摂取不捨のゆゑに正定聚の位に住す。このゆゑに臨終まつことなし、来迎たのむことなし。信心の定まるとき往生また定まるなり。来迎の儀則をまたず。
と「信心の定まるとき往生また定まるなり」とされたのであった。
- →正定聚