五濁増時多疑謗 道俗相嫌不用聞 見有修行起瞋毒 方便破壊競生怨
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『西方指南抄』中末に、法然聖人のご消息として以下の『法事讃』の文を引き、
- 見有修行起瞋毒 方便破壊競生怨
- (修行することあるを見ては瞋毒を起し、方便破壊して競ひて怨を生ず。)
- 如此生盲闡提輩 毀滅頓教永沈淪
- (かくのごとき生盲闡提の輩は、頓教を毀滅して永く沈淪す。)
- 超過大地微塵劫 未可得離三途身
- (大地微塵劫を超過すとも、いまだ三塗の身を離るることを得べからず。)
- 大衆同心皆懺悔 所有破法罪因縁
- (大衆同心にみな、あらゆる破法罪の因縁を懺悔せよ。) (法事讃 P.576)
この文の心は、浄土をねかひ、念仏を行する人をみては、毒心をおこし、ひかことをたくみめくらして、やうやうの方便をなして、専修の念仏の行をやふりあたをなして、申ととむるに候也。かくのことくの人は、むまれてより仏性のまなこしひて、善のたねをうしなへる、闡提人のともからなり。
この弥陀の名号をとなえて、なかき生死をはなれて、常住の極楽に往生すへけれとも、この教法をそしりほろほして、この罪によりて、なかく三悪道にしつむとき、かくのこときの人は、大地微塵劫をすくれとも、なかく三途の身をはなれむこと、あるへからすといふ也。
しかれはすなわち、さやうにひかこと申候らむ人おは、かへりてあはれみたまふへきもの也。
{─中略─}
かかる不信の衆生をおもへは、過去の父母・兄弟・親類也とおもひ候にも、慈悲をおこして、念仏かかで申て、極楽の上品上生にまいりて、さとりをひらき。生死にかへりて、誹謗不信の人おもむかへむと、善根を修しては、おほしめすへき事にて候也。このよしを御こころえあるへきなり。(鎌倉の二位の禅尼へ進ずる御返事)
とある。